カナダ・アラスカ沿岸水路 (バンクーバー〜テレグラフ・コーブ) |
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宿泊地 (航行距離) |
6月18日(土) |
海は凪いでおり、漕ぎ出すには良い日。ただ雨が降っていて寒い。 この状況でカヤックを組み立てる気になれなかったので、早々に出発を見合わせる。 いつまで経っても片付かない荷物 週末なのでテレビでは野球にゴルフにサッカーもやっていて、地元のプロサッカーチームであるバンクーバー・ホワイトキャップスの試合は会場が満員で、大盛り上がりの中、試合も1−0で勝利。 これでちょっとはこの街も平穏になる? |
Vancouver |
6月19日(日) |
天気予報は雨であったが降ってはおらず、出発地点の海岸に荷物を運ぶ。日曜日の朝、海岸沿いの公園は様々な人が行き交い、横目で見られつつ2時間でカヤックを組み立てる。結構慣れましたな。 荷物を運んでくれたタクシーの運転手さんと サンセット・ビーチで出艇準備 多いなぁ〜、と思っていた荷物も試しにカヤックの中に入れてみると全て収納され、改めてその積載能力の高さに驚いてしまう。 さぁ、出航だ!! お昼前に海に出て、西を目指す。大都市・バンクーバー沖は船が多く横波が頻繁に来てしまうが、カヤックが近づくとスピードを落としてくれる人もいて、手を振ってくれる。心配していた大型船の通航もなく、バンクーバーの町が小さくなっていく。 岸沿いに、時には島々を渡りながら、そこに見えるのは家・家・家。これはキャンプできないわ。 寝るところを探しつつ前進していると、ヨットに乗っている人達からの応援とアザラシ3頭のお出迎えで、やはり1頭が様子を見に近づいてくる。 おそらくこの旅一番の都会にお別れ
18時頃、民家のすぐそばの浜に上陸し、テントを張る。荷物を適当に防水袋に入れていた為、キャンプがぎこちない。 あぁ、海外で船旅しているんだよなぁ。 |
Joe Smith Cr 近く (39km) |
6月20日(月) |
22時を過ぎても暗くならず、体の節々が痛いし、波の音がうるさいしで眠れているのか分からない。上半身だけの疲れというのが新鮮である。 朝5時には明るくなり始め、今日も海沿いに建てられている家々や遠目にヨット、アザラシを見ながら漕いで行く。 “秘密の入り江(Secret Cove)”という所に寄り道してみるとヨットハーバーの中に店があり買い出し。思っていたより品数が豊富で、食糧・服・キャンプ用品にカナダ国旗の描かれている様々なお土産まで売っている。さすがに水は最後の1本になっていたけど。 海に浮かぶ船のガソリンスタンド兼コンビニ 「何か困ったことはある?」 と停泊しているカヤックを見ながら言う店員さん。 「大丈夫。食糧が手に入れば十分だよ」 「次は別の場所に泊めてね。ここは大きな船も来るし」 |
近く (34km) |
6月21日(火) |
夜中、カヤックを置いていた場所まで潮は上がり、どうする事もできず、見守り、祈るしかない。 朝起きてすぐにカヤックを見ると岩場の上に打ちあがっていてホッとするも船底が傷付いていないか心配である。 ここまで潮位が上がるとは思わなかった 相変わらず家々の続く陸地沿いを漕ぐ。海上はヨットが数艇と漁船、アザラシは頭だけをポッコリ出し、やがていなくなる。ネルソン島では少しずつキャンプに適してそうなビーチが見受けられ始めたけど、やっぱり誰かの土地だろう。バンクーバーからもっと遠ざかればキャンプし易くなるのだろうか?
17時過ぎ、石浜を見つけ草の生えている所まで荷を上げ、潮位の確認をするけど大丈夫かな?
夕食はソーセージ入りラーメンとふりかけ(のりたま)ごはん |
McRae Cove (31.5km) |
6月22日(水) |
テントのギリギリにまで来る潮にヒヤヒヤ。夜11時過ぎに潮が引き始めたのを確認してから寝袋に入る。 ジョージア海峡の北側に沿って進んで行く。対岸にはバンクーバー島が遠くに見え、雪を被った山並みが続いている。そして、こちらの岸沿いはやっぱり豪華な家・イエ・いえ。まぁ、バンクーバー島も遠めに見ているから良く見えているだけだと思うが。バンクーバー島の海岸沿いは人家続きで旅しない方が良い、とエコマリンの人も言っていたし。 凪いでいる海は安全だけどけっこう退屈 |
Powell River 10km西 (38km) |
6月23日(木) |
2日続けての鼻血と体の重さ、そして何よりここが良いキャンプ地なので停滞する。 波の立たない穏やかな海を眺めていると、黒い物体が3個ほど浮かんでいて、こちらを気にしている様子。毎日会いますね、アザラシくん。 本を読んだりしながら過ごしていると突然音がして、テントから外を見ると三頭のシカがこっちを見ており、‘クェッ’と吠えた後、来た道を逃げて行った。 昨日と全くいっしょの夕飯を食べ、日記を書きながら今、どしゃ降りの雨。 |
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6月24日(金) |
潮が引いた中、海辺まで荷を運び出発。一日休んだおかげで体は軽い。 ジョージア海峡の北に沿って進んでいたが、バンクーバー島沿いの航路に行くため横断開始。クアドラ島まで約25km、向かい風で雨。 島に近づくと崖が続いていて上陸できず、ディスカバリー海峡に入ってしまう。今日の内にここまで漕ぐとは思っていなかったので潮流を調べておらず、進めるのか心配したけど、今がスラック(憩潮:潮の流れが止まる状態)なのか進みは良い。 進みが良く、新しい海図を取り出すためにいったん上陸 灯台の近くに上陸してテントを張り、ご飯を作っていると、さっきまで穏やかだった海が上げ潮流により西から東へと川のように流れている。これはちゃんと潮流表を見ないといけないな。 内海は島々に囲まれていて波は穏やかな一方、潮の満ち引きによって作り出される潮の流れがあり、それを無視して旅をすることはできない。バンクーバー島北部の水路では下げ潮流(満潮→干潮時の潮の流れ)が西への流れとなり、進行方向が西である自分にとって下げ潮流が追い潮となる。[上げ潮流は干潮から満潮になる時に起きる潮の流れ] 対岸にあるキャンベルリバーの街並み 潮汐表・潮流表・海図を何度も見返す |
(42km) |
6月25日(土) |
下げ潮流(西流)になるのが午後からなので、昼までゆっくり過ごし、13時前に出発。 転流の時刻は13時34分。潮の流れは止まっている。 まずは食糧調達のためキャンベルリバーの街に寄り、スーパーで大量購入。 街に出てすることは買い物とメール 買い物をしている間に潮の流れが良くなっていて、カヤックのスピードがグングン上がる。 本当はこの調子で進みたいけれど、この先に非常に潮の流れが速い箇所があり、漕ぎ切る前に逆潮になる可能性があるので、その手前で本日はパドルを置くことにする。 Seymour Narrowsに吸い込まれていく大型客船 |
(18km) |
6月26日(日) |
Seymour Narrows:最大流速が30km/hに達する、今回の旅で最も潮の流れが速い瀬戸。ちなみに鳴門海峡は18km/h、カヤックは4〜6km/hである。
上げ潮流から下げ潮流へと流れる方角が180度転流する、14時29分頃のスラックに合わせて出発。まだ上げ潮の流れが残っているせいか進みは遅い。 750mと最も幅が狭いところに差し掛かったとき、一人のカヤッカーとすれ違い、お互い手を振ってあいさつをして、すぐにパドリングを再開する。速いなぁ〜、彼。 こういう危険な場所は早く通過しないといけないし、何より向こうはこれから逆潮になるから急ぐのは当然だろう。 転流の時間なので潮の流れは止まっている こちらは時間が経つにつれ追い潮が加速し、カヤックが進む進む。 イルカが泳いでいる。聞こえるのは海にパドルが入る音だけでとても静かだ。 遠くの方から小型船のエンジン音が鳴り響き始め、その音に驚いたのか、いつの間にかイルカの姿は見えなくなっていた。
岩の上に荷物を上げて、本日は潮の心配はなし? |
(27.5km) |
6月27日(月) |
出発するも途中から全く前進していないことに気付き、慌てて岸に寄り、接岸。潮のことを考えずに海に出たのだが、ジョンストン海峡も流れが速く、今はダメな時間であった。 沖ではタグボートがはしけ(艀)を引いている 昼過ぎから西への流れとなり再出発するも、あまり進んでいないような・・。 「これから潮は良くなるよ」 と、犬と共にボートに乗っているおじさんに励まされる。 時間が経つに連れ潮流は勢いを増し、午後だけでかなり進んだな。 キャンプ地探しはやはり苦労して、昼の長いことだけが救いである。 ジョンストン海峡・幅は2〜3kmほど 干満差は最大4.5mほど |
Hkusam (37km) |
6月28日(火) |
潮待ちのため昼まで本を読んで過ごし、午後から出航。 風景の変わり方で自分のカヤックのスピードを知る。 突然、“ブシューッ”と音がして後ろを振り向くと、クジラが潮を吹いている。イルカも現れ、でもアザラシは今日は見かけず。 岸近くまで生えている木々と険しい崖が ずっと続き、寝床探しに苦労する毎日 霧雨の中、パドリングに集中する。一隻の船が通り過ぎざま、こちらに手を振ってくれる。 キャンプ地に着岸 |
Windy Pt (23km) |
6月29日(水) |
ラジオの天気予報通りに雨、そして風が吹き、潮の流れも加わって午前の海は時化模様。午後からは風がさらに強まり、白波がバンバン立っていて、今日は海に出る日ではない。 静寂と寒さ。ただ、時折差し込む陽の暖かさは夏の訪れを感じさせる。 夜8時を回ってもまだ昼過ぎのような明るさに、食事に読書にと時間を気にせずに行動が出来て、自由な所だと思う反面、よく眠れないな、まぶしくて。 狭い海岸散策は10分で終了 船も宿も上へ上へ上げる |
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6月30日(木) |
昨日と打って変わり凪ぎ。天気はまたも曇りで小雨。 クジラが浮上するたびに再浮上するのを狙ってカメラのシャッターを押す。 すると突然、前方200m程の所でクジラが飛んだ! これは写真だ、と次のジャンプの瞬間を待っていたけれど、クジラはもう2度と飛ばなかった。 クジラのいる海 「クジラならあっちにいたよ」 さっき見たことを少し得意げに、すれ違った老夫婦のカヤッカーに言う。 浜辺ではキャンプをしている人達もいて、良い場所は取られているな。 結局、岩をよじ登って寝場所を確保する。 防水くつ下の中に海水が入ったために足が冷え冷え、吐く息白いし、寒い! |
(43km) |
7月1日(金) |
夜中に足元がフニュフニュすると思ったら、海水がテントまで押し寄せて来ていて、もうダメだわ。 外を見るとサンダルが海の上を漂っている。慌てて潮汐表を確認して、海水に浸かっていないマットレスの上で潮が引くのを待つ。 あまり眠れず朝。海に浮かんでいたサンダルは片方は見つかったけれど、片割れは引き波にさらわれ行方知れず・・・被害はそれぐらい。 床下浸水現場 天気は悪く、海上では風が白波を作り、本来ならば海に出る日ではない。でもここにいたら今夜、昨晩以上に潮位が上がる予定なので海に出ざるを得ない。 荒波。でも東からの風が船を押してくれ、進みは良い。 わずか5kmの距離も波に翻弄されお腹いっぱいの中、テレグラフ・コーブ着。 テレグラフ・コーブは地図通りの小さな入り江である キャンプ場があったのでそこで泊まることにして、テントを設営した後、街の散策に出かける。も、すぐに終了。中心部は端から端まで歩いて5分ぐらい。 街行く人はホエールウォッチング目的で来た観光客が多いようで、お土産もクジラ関係の物ばかりである。イルカやクジラを見に行くのか、カヤックツアーに参加している人もたくさんいた。今日の海は荒れているから気をつけてねぇ〜。 レストランで夕食をとったし、キャンプ場に戻ってする事はと言えば、2週間ぶりのシャワー。それは1ドルコインを入れてお湯が出て、6分経ったら突然お湯が出なくなるというもの・・悲しい・・・。 久しぶりの外食はミディアム・ウェルダンの肉。観光地なので値段は高い 航行距離(バンクーバー〜テレグラフ・コーブ):338.5km |
Telegragh Cove (5.5km) |